「R.E.D. 警察庁特殊防犯対策官室」古野まほろ著
「R.E.D. 警察庁特殊防犯対策官室」古野まほろ著
舞台は近未来。2020年の東京オリンピックの後に襲った「厄災」によって日本の治安は悪化し、東京から大量の難民が発生した。政府は、名古屋に近い中京都を暫定首都として定めた。行政機関もすべて移転。この中京都と東京・大阪などの大都市を結ぶ新幹線とリニア新幹線の始発駅が中京駅。その中京駅で反体制派による同時多発テロが計画されていることを掴んだ警察庁は、特殊防犯対策官室(通称R.E.D.)にテログループの制圧を命じる。
【あらすじ】R.E.D.は、日本初の女性総理、上原英子がテロを未然に防ぐべく設立された総理直轄の組織で、神代大作警視正を長として、箱崎ひかり警視をリーダーに「サッチョウ・ローズ」と呼ばれる緋縅時絵以下6人から成る。ローズの面々は期待に応えて、見事にテログループを制圧し、役目を果たす。
しかし、箱崎はゴスロリ服、緋縅ら6人はいずれも女子高生の制服を身にまとうというおよそ警官らしくない女性ばかり。とはいえ、狙撃、体術、IT技術など彼女らの能力はずぬけており、これまでにもいくつものテロ事件を制圧してきた。
中京駅テロ事件が解決したのもつかの間、今度は警視総監が狙撃される事件が勃発。緋縅らは早速捜査を開始するが、事件の背景には上原総理のライバル鶴井副総理も絡む巨大疑獄事件があることが判明する--。
【読みどころ】少女風の女性が拳銃を突きだしている本書のカバーイラストは、いかにもラノベ風。緋縅らの秘密の出自も含めて、ファンタスティックな趣が強いが、警察機構や疑獄事件などの細部はリアルに描かれている。
ラノベの体裁をまといながらも物語の奥深さを感じさせる新機軸の警察小説。 〈石〉
(新潮社 693円)