「全国駄菓子屋探訪」土橋真監修

公開日: 更新日:

「全国駄菓子屋探訪」土橋真監修

 駄菓子屋は、少子化の波を一番に受け、客層も、購買額も日本で一番小さな商売。なので絶滅寸前と思いきや、環境に適応しながら「子どもと大人、街と人々をつなぐ大切な居場所」として認知され始めているという。

 本書は、各地の特色ある駄菓子屋を巡り、その歴史や店主の思いを伝えるビジュアルガイド。

 群馬県伊勢崎市の「サッちゃんち」は、松島幸子さんが昭和57年に実家の敷地の一角で始めた店。

 店内には幸子さんが子どもの頃に通った駄菓子屋のように鉄板を設置して、もんじゃ焼きを提供。生地にイチゴのシロップが入るのが伊勢崎のもんじゃの特徴だという。

 幸子さんが40年間、子どもたちの悩みに耳を傾け、さりげなく社会のルールを教えてきたことが、子どもたちとのやりとりから分かるという。

 千葉県八千代市の「まぼろし堂」は、周りに何もない田園地帯に家族総出で手作りした店。口コミで人気を呼び、今では全国からお客さんがやってくる。同店がコロナ禍で苦肉の末に始めたのが自作の「手動」販売機で駄菓子を売る仕組み(そのユニークな方法は本書で)。

 ほかにも、88歳の遠藤さんが埼玉県越谷市で営む「赤城屋」や、京都の座敷スタイルの駄菓子屋「北原商店」、売り場面積が2500平方メートルもある岡山県瀬戸内市のその名も「日本一のだがし売場」、そして夜は酒場となり、大人たちの飲食代の一部が昼に来る子どもたちの軽食代となる、子ども食堂的な役割も持つ奈良県生駒市の「まほうのだがしやチロル堂」など。

 北海道から石垣島まで29店の駄菓子屋を紹介。さらに駄菓子メーカーや問屋にも取材。駄菓子文化の歴史から未来までを語り尽くした駄菓子屋愛にあふれた一冊。

(トゥーヴァージンズ 2090円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭