「日暮れのあと」小池真理子著

公開日: 更新日:

「日暮れのあと」小池真理子著

 昼過ぎに玄関ブザーがけたたましく鳴った。8年前に母が古くさいと言って最新型のインターホンを取り付けたのだが、なぜか電機屋はブザーを取り外していかなかったのだ。

 その頃入院中だった父は、1週間後、容体が急変して亡くなった。通夜を終えて帰宅すると、10時過ぎにブザーが鳴り響いた。「おとうさんよ、きっと」と母が言った。「私」はインターホンのモニターを見たが、何も見えなかった。

 あれから8年もたっているからブザーの機能は失われているはずなのにと不審に思いながら、インターホンのモニターに何も映っていないのを確認。居間に戻ろうとしたら、「突然、おじゃまして申し訳ありません」と女の声がした。かつて妹の夏美がつきあっていた杉浦の妻だった。夏美と杉浦は昨年、伊豆の海で溺死したのだった。(「喪中の客」)

 もつれた愛を描いた7編の短編小説。

(文藝春秋 1815円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    八角理事長が明かした3大関のそれぞれの課題とは? 豊昇龍3敗目で今場所の綱とりほぼ絶望的

  2. 2

    フジテレビにジャニーズの呪縛…フジ・メディアHD金光修社長の元妻は旧ジャニーズ取締役というズブズブの関係

  3. 3

    元DeNAバウアーやらかし炎上した不謹慎投稿の中身…たびたびの“舌禍”で日米ともにソッポ?

  4. 4

    松本人志は「女性トラブル」で中居正広の相談に乗るも…電撃引退にショック隠しきれず復帰に悪影響

  5. 5

    ついに不動産バブル終焉か…「住宅ローン」金利上昇で中古マンションの価格下落が始まる

  1. 6

    フジテレビ顧問弁護士・菊間千乃氏に何が?「羽鳥慎一モーニングショー」急きょ出演取りやめの波紋

  2. 7

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  3. 8

    菊間千乃は元女子アナ勝ち組No.1! フジテレビ退社→弁護士→4社で社外取締役の波瀾万丈

  4. 9

    中居正広「引退」で再注目…フジテレビ発アイドルグループ元メンバーが告発した大物芸能人から《性被害》の投稿の真偽

  5. 10

    中居正広「華麗なる女性遍歴」とその裏にあるTV局との蜜月…ネットには「ジャニーさんの亡霊」の声も