「SEEING SCIENCE 科学の可視化の世界」ジャック・チャロナー著 佐倉統日本語版監修 片神貴子訳
「SEEING SCIENCE 科学の可視化の世界」ジャック・チャロナー著 佐倉統日本語版監修 片神貴子訳
空気中をジェット機よりも速く飛び交う原子や分子、生物の細胞の一つ一つに秘められた生命の神秘、そして宇宙から降り注ぐ粒子から、地球がある天の川銀河の全体像まで。科学は「見る道具」を駆使して、人間の目では見えないものの正体を明らかにしてきた。
本書は、そうした「見えない」ものを「見える」ようにしてきた、科学の挑戦から生まれたさまざまなビジュアル表現を集めたサイエンス図鑑。
見る道具のはじまりともいえる顕微鏡と望遠鏡は、ともに16世紀最後の10年間に生まれ、幾世紀にわたって重要な役割を果たしてきた。
ガリレオ・ガリレイが、1609年に自作の素朴な望遠鏡で観察した月や天の川のスケッチ。
そして、人類で初めて細菌を見たアントニ・ファン・レーウェンフックが、1660年代に書き残した細菌や自身やほかの動物の精子のスケッチなどがまず紹介される。
以降、道具の進化とともに見えるものは爆発的に増えてくる。
太陽の光球(表面として目に見える層)の天体写真や、M87銀河のブラックホール、部分ごとに異なる蛍光色素で染色したヒトの生細胞など、まずは顕微鏡や望遠鏡などの可視化する技術と、それらを使って生み出されたイメージを紹介。
さらに、イルカの仲間オキゴンドウの高周波の鳴き声を可視化した、まるで万華鏡をのぞいたかのようなビジュアルなどの「データの可視化」をはじめ、スーパーコンピューターのシミュレーションによる数理モデル、さらにアートと科学が融合したサイエンスアート作品まで160点以上のイメージを収録。
数式や定理、理論を超えて、科学の成果を可視化することで「科学の美しさ」を実感させてくれる知的好奇心刺激本。
(東京書籍 4180円)