著者のコラム一覧
金井真紀文筆家・イラストレーター

テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て2015年から文筆家・イラストレーター。著書に「世界はフムフムで満ちている」「パリのすてきなおじさん」「日本に住んでる世界のひと」など。

「インドの食卓」笠井亮平著

公開日: 更新日:

「インドの食卓」笠井亮平著

 どんな国を旅したあとも、帰ってきてしばらくは楽しい中毒症状に陥る。現地で食べたものを日本で探したり、その国の映画を見たり。

 インドのときは重症だった。帰国後、身の回りのインドっぽいものすべてに心身が反応して困った。しまいには、のどアメの看板に書かれた「ノド」が「インド」の一部に見えてドキドキした。アホだ。

 我慢できず、数カ月後またインドに出かけてしまった。初回はチェンナイ、2度目はコルカタ。あぁ、こうして書いているとまたインド熱がうずく。

 さて今回ご紹介するのは食べ物事情からインドをひもとく一冊。そこに「カレー」はない、と言い切るサブタイトルにまず引かれる。カレー粉は英国で作られた、インド料理は辛いとは限らない、酒や牛もどかどか消費されている……。

 ページをめくるたびにインドの食に対する半端なイメージが吹き飛ばされていく。著者は南アジアの国際政治を専門とする研究者なので、歴史やデータの裏付けがしっかりしている。フフフ、これなら安心して受け売りできそうだ。

 読み終わったあとに他人に受け売りしたくなる本はすばらしい。本書はまさにそれ。インドでは激辛トウガラシを軍事利用しているとか、既婚女性が夫の健康や長寿を願って断食する風習があるとか、亀田製菓がインドに進出して現地版の「柿の種」を作ったとか、受け売りしたくなるエピソードが満載だった。

 インドで誕生した中華メニューに言及した「インド中華料理」の章もおもしろかった。さらには「アメリカンなインド中華」が登場して、もう何が何やら。世界は想像以上にごちゃごちゃだ。 (早川書房 1144円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  2. 2

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  3. 3

    参院選で自民が目論む「石原伸晃外し」…東京選挙区の“目玉候補”に菊川怜、NPO女性代表の名前

  4. 4

    NiziU再始動の最大戦略は「ビジュ変」…大幅バージョンアップの“逆輸入”和製K-POPで韓国ブレークなるか?

  5. 5

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  1. 6

    サザン桑田佳祐の食道がん闘病秘話と今も語り継がれる「いとしのユウコ」伝説

  2. 7

    我が専大松戸の新1年生は「面白い素材」がゴロゴロ、チームの停滞ムードに光明が差した

  3. 8

    逆風フジテレビゆえ小泉今日子「続・続・最後から二番目の恋」に集まる期待…厳しい船出か、3度目のブームか

  4. 9

    新沼謙治さんが語り尽くした「鳩」へのこだわり「夢は広々とした土地で飼って暮らすこと」

  5. 10

    石橋貴明のセクハラ疑惑は「夕やけニャンニャン」時代からの筋金入り!中居正広氏との「フジ類似事案」