「お尻の文化誌」ヘザー・ラドケ著 甲斐理恵子訳

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「お尻の文化誌」ヘザー・ラドケ著 甲斐理恵子訳

 胴体下部のお尻と呼ばれる部位は、長年人間にとって体の一部を超えた特別な意味を持っていた。自分のお尻は自分で直接見ることはできず、他者から見られる位置にあり、なかでも女性はさまざまな評価軸に振り回されてきた。本書は、特に西欧文化の中で解釈・評価されてきたお尻について時代を追って多角的に分析する。

 たとえば、18世紀に「ホッテントット」と呼ばれ、現在の南アフリカに暮らすクエイ族の典型として多くの人の目にさらされたサラ・バートマンのお尻。彼女のお尻は、見せ物として利用されただけでなく、南アフリカ先住民とヨーロッパ人が違う種だと証明する研究者の研究対象になった。全裸で動物同然に扱われて観察された結果、研究者は彼女を「人間よりも大型類人猿にかなり近い」と結論づけた。

 政治的・経済的実権を握る性的指向ストレートの白人男性が、あらゆる人種の女性のお尻の基準や嗜好やイデオロギーをいかに規定したか。著者自らの体験も隠さず披露しつつ、服飾、広告、メディア、エクササイズなどお尻にまつわるさまざまな文化を網羅しながらお尻の意味を探った意欲作だ。

(原書房 4180円)

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