(1)女っぷりも良い灯籠鬢の貝髷
(一)
「お母さま、行ってまいります」
千加は、臥せっている母の豊に声を掛けると、髪結いの道具が入った箱を取った。
「お千加、すまないねえ」
弱々しい声が返って来る。
母の豊は、一年ほど前に長屋の井戸端で足を滑らせて右足首を痛めている。骨折はし…
この記事は有料会員限定です。
日刊ゲンダイDIGITALに有料会員登録すると続きをお読みいただけます。
(残り1,050文字/全文1,190文字)
【ログインしていただくと記事中の広告が非表示になります】