エドワード・ゴーリーは絵本を通じて、世界が含み持つ残虐性を子供に提示した
楽しむために子供を殺し続けた「おぞましい二人」はなんと実話
最初に彼の話題作となった『うろんな客』では、突然現れた小さな生きものが家に住み着いて、壁に落書きをしたり、蔵書を破いたり、喚き散らしたりして、これでもかと迷惑行為を繰り返します。なぜ家人は追い出さないのかと首を傾げていると、その正体にあっと驚くことになります。
『蟲の神』では、行方不明になった幼い女の子の運命が描かれます。両親や警察が必死になって女の子を捜索しますが、連れ去られた女の子は容赦なく蟲の神の生け贄になります。背後に見え隠れするのは人身売買組織でしょうか。
『不幸な子供』で描かれるのは、小公女セーラを想起させる女の子。心正しい幼い子が、ひたすら堕ちていく姿がえんえんと続きます。
強烈なのは『ギャラシュリークラムのちびっ子たち』。26人の子供たちが死んでいく様が展開します。
「かいだんおちた」「ごろつきのえじき」「けんかのまきぞえ」──。
もう勘弁してください。心が蝕まれます。壊れます。
いや、これは作り話だから。創作だから──と、なんとか心の平静を保っていた読者に対して、ゴーリーは容赦なく痛烈な一撃を加えます。
『おぞましい二人』(河出書房新社:1320円)。
2人の男女が、ただ楽しむために子供を殺し続けます。その数、5人。
実話である。彼は、とうとう創作と現実世界との垣根を取っ払った。しかも刊行時、犯人は2人とも存命していて、服役中だったという。
読後に心を落ち着かせる時間が必要になるので、読書に当たっては余裕をもって時間をとらねばなりません。
最近は、書店の数が激減しているとのこと。
アナログからデジタルへ、紙媒体から電子媒体へと移行しているのが主な要因でしょうが、慣れ親しんだ書店文化が縮小していくのは、なんとも寂しく哀しい思いが否めません。
幼い子の前に絵本を広げて読み聞かせる親子の触れあいも、いまは昔となりつつあるそうな。いずれタブレットなどの電子端末に置き換わるのかもしれません。
おのれ書店経営を圧迫した万引き犯ども。呪ってやる。