「国鉄制式形式 全蒸気機関車 ビジュアルガイド」レイルウエイズグラフィック著
「国鉄制式形式 全蒸気機関車 ビジュアルガイド」レイルウエイズグラフィック著
新幹線網が充実した現代にあっても、蒸気機関車が走る姿に感動するのはなぜだろうか。今も動態保存される蒸気機関車の運行日には多くの人が押し寄せる。
本書は、国鉄時代に製造された機関車と、それ以前に製造・運用された機関車27形式をすべて網羅したガイドブック。
1914年に製造が始まった「8620形」は、大正時代に開発された代表的な旅客用蒸気機関車で、当時の旅客機としては異例の687両も製造されたという。
同形式は、明治末期の鉄道国有化でそれまでの輸入機に置き換えて標準化する狙いもあり、北海道から九州まで幅広く活用された。
製造から100年を超えながら、昨年の3月までJR九州で「SLあそBOY」や「SL人吉」などとして運行されていた。
1968年の福井国体に天皇が行幸される際にお召し列車として運行された「28651号」や、東北本線を走っていた「Sキャブ」と呼ばれた初期の形状を残した車両「8657形」(1966年福島で撮影)など、さまざまな路線で走っていたその雄姿を貴重な写真で紹介する。
以降、8620形の改良増備型として昭和初期の1929年に誕生した「C50形」(製造数158両)から、日本の機関車としては最多の1115両も製造され「デゴイチ」の愛称がSLの代名詞にもなった「D51形」、そして急勾配の難所だった奥羽本線の板谷峠の電化工事の中断で急きょわずか5両だけ製造された貨物専用の「E10形」まで。
機関車に石炭と水を積んだ燃料運搬車両を接続した「テンダー機関車」と、本体車両にそれらを装備した「タンク機関車」などの種類別に解説。
愛好家ならずとも、蒸気機関車はやはり、眺めているだけで心が躍る。
(グラフィック社 4180円)