「秘宝館という文化装置」妙木忍著
秘宝館とは、セックスシーンを再現した等身大人形や、性器の模型などを展示する性愛をテーマにした博物館。全国に少なくとも20館はあったという秘宝館だが、90年代以降に衰退し、今や開館しているのはわずか2館のみで、その存在は風前のともしびともいえる。
本書は、「昭和の文化遺産」などと称されるこの日本独自の遊興空間を、さまざまな観点から学術的に考察した異色の研究書。
遠野物語に出てくる「山崎の金勢様」などの信仰対象や、各地の神社の奉納物など、「性の観光化」は古くからあるが、三重県に日本で初めての秘宝館「元祖国際秘宝館伊勢館」ができたのは1972年と、意外にもその歴史は浅い。
2007年に閉館した同館だが、最盛期には年間27万人もの入館者があり、展示面積6000平方メートルのタージ・マハルを模した建物内に、約1万点もの展示物があったという。さらに、81年には姉妹館も2館、開館している。
元祖国際秘宝館の最大の特徴は、性病や妊娠に関する正しい知識を伝えるための医学模型が展示された「保健衛生コーナー」が設置されていたことだという。同館の起源はその医学的展示にあると著者は指摘する。