「秘宝館という文化装置」妙木忍著

公開日: 更新日:

 秘宝館とは、セックスシーンを再現した等身大人形や、性器の模型などを展示する性愛をテーマにした博物館。全国に少なくとも20館はあったという秘宝館だが、90年代以降に衰退し、今や開館しているのはわずか2館のみで、その存在は風前のともしびともいえる。

 本書は、「昭和の文化遺産」などと称されるこの日本独自の遊興空間を、さまざまな観点から学術的に考察した異色の研究書。

 遠野物語に出てくる「山崎の金勢様」などの信仰対象や、各地の神社の奉納物など、「性の観光化」は古くからあるが、三重県に日本で初めての秘宝館「元祖国際秘宝館伊勢館」ができたのは1972年と、意外にもその歴史は浅い。

 2007年に閉館した同館だが、最盛期には年間27万人もの入館者があり、展示面積6000平方メートルのタージ・マハルを模した建物内に、約1万点もの展示物があったという。さらに、81年には姉妹館も2館、開館している。

 元祖国際秘宝館の最大の特徴は、性病や妊娠に関する正しい知識を伝えるための医学模型が展示された「保健衛生コーナー」が設置されていたことだという。同館の起源はその医学的展示にあると著者は指摘する。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…