殺陣なし時代劇 映画「殿、利息でござる!」ヒットの秘密
もちろん、肝心なのは作品の内容だが、映画ジャーナリストの大高宏雄氏は「殿、利息でござる!」の人気について、「複数の要素がうまく合致した結果ではないか」と分析する。
原作は歴史学者・磯田道史による短編集「無私の日本人」に所収されている評伝「穀田屋十三郎」。フィギュア羽生結弦選手の俳優デビューという話題性もあり、実際、ちょんまげ姿の羽生見たさに中高年女性がわんさか劇場に足を運んでいるという。
「阿部サダヲや松田龍平の好演も光ります。特に阿部は直近の主演映画『謝罪の王様』も興収20億円超のヒットとなりましたが、大泉洋同様、コミカルな持ち味に人気があり、安定して客を呼べる俳優のひとり。映画のトーンも全編コメディータッチかと思いきや、そうではない意外性があった。笑いだけを追求するのではなく、江戸時代の仙台藩を舞台とした庶民とお上による金銭バトルがまっとうに描かれた真面目な時代劇。往年の時代劇ファンも集客につながっているのではないか」(前出の大高氏)
「武士の家計簿」(堺雅人主演、10年)のヒットを皮切りに「超高速!参勤交代」(佐々木蔵之介主演、14年)、「駆込み女と駆出し男」(大泉洋主演、15年)と、人斬りではなく人間ドラマに重きをおいたコミカルな時代劇を手がけている松竹。今回、「殿」が「猫」を踏んづけたことで、大船調のホームドラマだけではない新たなお家芸にますます勢いがつきそうだ。