ドラマより楽しい? 海老蔵が歌舞伎で“出世巡る男の戦い”
普通、芝居といえば、悪人が主人公でも正義の人がそれを倒してめでたしめでたしなのだが、「柳影澤蛍火」は、悪と悪の闘いだ。人間の持つ内面の怖さを描き、「怪談」とは銘打たれていないが、夏にふさわしい、冷房効果のある芝居だ。ラスト近くには幽霊も出てくる。
昼の部はその後、猿之助の舞踊劇「流星」で、宙乗りもあって華やかに終わる。夜の部は人情話の「荒川の佐吉」で猿之助が泣かせ、そのあと、歌舞伎十八番「鎌髭」「景清」で海老蔵が迫力満点の荒事を披露。
何かと話題の海老蔵だが、まだ歌舞伎座で見たことのない方には、ぜひ見て欲しい。
(作家・中川右介)