「鬼平犯科帳」終了 時代劇衰退で“社会荒れる”と危惧の声
そんなシーンを題材に、「悪いことしたらダメだよ」と大人が子供に倫理観を教えるキッカケとなるのが時代劇だった。だからこそ、作り手にも強さがあった。それを象徴するのが、1973年に神奈川で起きた殺人事件だという。
「男性が『必殺仕置人』を見ているうちに性的に興奮。一緒に見ていた女性を誘ったものの、拒まれたことに腹を立てて殺したという事件です。男の供述で、必殺シリーズは打ち切りの危機となりましたが、当時のプロデューサーが『番組は“殺人はよくない”ということを訴えるものであり、これを見て殺人を犯すというのは番組の責任ではなく本人の責任だ』と明言したのです」
その後、犯人は「番組のせいではない」と証言を変えることになる。
■制作側には倫理観、道徳観を伝える意思が
「今のテレビ業界で、このような対応は難しいでしょうが、当時の制作陣は、時代劇の仕事に対する意地とプライドを持ちながらメッセージを伝えようとしていました。現代で、周りの顔色をうかがわずに自分の価値観をきちんと伝えることができる大人がどれくらいいるでしょうか。制作側の姿勢には、『自分の倫理観、道徳観を伝える』という意思がハッキリ表れていたのです」