深夜っぽさに贅沢感も 堤真一「左江内氏」が面白い理由
堤真一主演「スーパーサラリーマン左江内氏」は、今期ドラマで最も笑える一本である。ただし誰もが笑えるかどうかは微妙。何しろ脚本・演出が「勇者ヨシヒコ」シリーズ(テレビ東京系)の福田雄一監督なのだ。あのテイストが好きな人なら、とことん楽しめる。
地味なサラリーマン・左江内(堤)が、ひょんなことからスーパーマンになった。会社ではほぼ戦力外で、家庭では鬼嫁・円子(小泉今日子)に支配されている左江内だが、遭難しかけたトレジャーボートを助けたり、遊園地の爆弾事件を解決したりと大忙しだ。
しかし、そんな活躍よりも、このドラマのキモは左江内と円子の家庭内バトルにある。特に円子に関しては、演じる小泉の愛すべきヤンキー性をフル活用すべく、藤子・F・不二雄先生の原作より強烈なキャラに変更され、バトルというより一方的な勝負。一度言い出したら誰も止められない円子と、無駄と知りつつ抵抗する左江内のやりとりが毎回、苦笑いを誘う。
さらに「勇者ヨシヒコ」から出張してきたかのような刑事役のムロツヨシ、占い師や回転寿司の店員など神出鬼没の佐藤二朗もいて、例によってマイペースで自由な芝居を繰り広げる。深夜ドラマのトンガリ感と週末ゴールデンのゼイタク感。その無理やりなハイブリッドで推進する、福田ワールド全開のドラマだ。