オスマン大虐殺を映像化した監督 「迫害はいつも意図的」
「いつの時代もそうですが、紛争や災害でヒーローになるのは、ごく普通の生活を送っている庶民だと思うんです。誰しも、まさか自分の家の天井が落ちてくるとは思っていないでしょうけど、現実にはそういうまさかは起こり得るんですね。民族迫害になると、ナチスのホロコーストであれ、ミャンマーによるロヒンギャ迫害であれ、いつも人間の仕業によって意図的に仕掛けられているのです」
――映画で描いたのは歴史ではなく、現代にも通じる普遍的な出来事だと。
「トルコ政府は今も公には計画的な虐殺であることを認めていませんが、オスマン帝国は、少数派でありながら中流階級を牛耳っていたアルメニア人への偏見をあおり、社会不安などから目を背けるスケープゴート、つまり、いけにえにしたんです。これは現代のヘイトスピーチにも通じる。身近な存在を狙い撃ちするんですね」
――そういう負の歴史はいつまた繰り返されてもおかしくないと。
「世界を見れば、お分かりの通りです。現代は情報があふれ、コミュニケーションツールが発展していますが、人と人とが分断されがちです。いつも同じ思想、思考、仲間と交流しているだけで、それ以外の人とは交わっていないんですね。だからこそ、異民族どころか、同じ民族でも偏見が生まれ、争いが生じる。官僚や軍部によって、いつまた扇動されてもおかしくない危険な状況だと思います」