「天狗党」 日本人はだまされやすい民族であることを痛感
彼らは幕府の追討軍と戦ったが次第に劣勢になり、京都を目指したのは水戸斉昭の子・徳川慶喜の協力を得て朝廷に尊攘の意思を伝えるためだった。だが追い詰められ、敦賀で降伏。352人が斬罪される悲惨な結末を迎えた。
天狗党は幕末を代表する悲劇だが、皮肉な面もある。彼らは慶喜に望みを託しながら、慶喜が追討軍を指揮していることを知り愕然とする。なんだか二・二六事件のようだ。決起した皇道派の青年将校たちは天皇の大御心を期待し、天皇の怒りによって銃殺された。
本作の仙太郎は加多たちを疑いながらも、彼らを信じようと努力する。だが天狗党の上層部は我が身を守るために百姓など身分の低い仲間を抹殺する。仙太郎も農民も武士という特権階級に裏切られた。本作を見ると、日本人がだまされやすい民族であることを痛感させられるのだ。
(森田健司)