読み書き苦手な識字障害でも口伝で教えられたからよかった
誰もが認める売れっ子落語家の花緑だが、ずっと抱いていたコンプレックスは消えなかった。自分は勉強ができない落ちこぼれだという思い込みである。
「それが病気のせいだと気づかせてくれたのは、5年前の夏に『ジョブチューン』というテレビ番組に出たのがきっかけでした。小学3年生の年の通知表を見せて、『1と2ばかりでも落語を150席話せるし、弟子もいるよ』みたいな話をしたわけです。後日、それを見た視聴者から事務所にメールがあって、『息子と同じ発達障害児だったんですね』と指摘されました。調べてみると、小学生時代のたいていのことが発達障害の症状に当てはまるんです」
発達障害とは、脳機能の発達に関係する先天的な障害の総称である。学習障害、注意欠陥、多動性障害、多弁症などがあり、花緑の場合は学習障害の中でも、知的発達に遅れはないが、教育段階に見合わない読み書きに問題がある識字障害(ディスレクシア)に当たるという。
「よく忘れ物をするのは『注意欠陥』で、授業中におしゃべりして先生に注意されていたのは『多弁症』だったわけです。発達障害とわかって腑に落ちただけでなく、とても気が楽になりました。悪いのは僕じゃなかった。病気なんだと、救われた思いです」