読み書き苦手な識字障害でも口伝で教えられたからよかった
多分、心の中にたまっていた澱のようなものが消えていく感覚だったと推察される。
「読み書きが苦手な識字障害であっても、落語は口伝で教えられたからよかった。多弁症だったおかげで落語家としての今の自分があるわけで、発達障害だったことを感謝したいくらいです」
この事実を花緑は昨年、著作の「花緑の幸せ入門」(竹書房)の中で告白した。
「公表したことでさらに気が楽になりました。新聞、雑誌のインタビューでお話ししましたし、日刊ゲンダイの『愉快な病人たち』の欄にも登場しました」
私はその記事を読んで驚いた。発達障害のことは知っていたが、まさか落語家の中にいて、それも花緑がそうだったとは。
「発達障害という病気が一般的に認知されてなかった当時は、親も先生方もわかってなかったんですね。最近は文科省の指導でしっかり対応されてると聞いてます」
そう語る花緑の表情は晴れ晴れとしていた。
(つづく)