ピエール瀧も怪演「麻雀放浪記2020」に込められた批判精神
阿佐田哲也の原作小説を、舞台を戦後から2020年に大胆にアレンジしたギャンブルドラマ。1945年からタイムスリップしてきた凄腕の麻雀打ち、坊や哲(斎藤工)が、あまりに変わり果てた日本の姿に困惑しつつも、偶然にもブームとなっていた麻雀の腕ひとつで困難を切り開いていく姿をユーモアを交えて描く。
「iPhoneだけで撮影された、20年の日本社会の描写が強烈です。どこかの国が米軍基地にミサイルを撃ち込み国土は荒廃、マイナンバーチップを埋め込まない国民や、政府に反対するデモ隊は凶暴な警察に追われ、貧富の差も拡大している。現実の日本の問題点を強調したように感じられる、批判精神あふれる作風です。特にピエール瀧の役柄は、元五輪組織委員会会長でスケベな“モリ”という黒幕的な男。いかにも腹黒い権力者然とした役作りが、怪演と呼ぶにふさわしい」(前出の前田氏)
白石監督自身も会見を開いて公開の意義を説き、過剰な自粛ムードやバッシングに異を唱えるなど、作品ともども息苦しい日本の空気を打ち破る勢いだ。
興行収入的にはランク圏外だが、何かスキャンダルが起こるとお蔵入りになりがちな風潮の中、監督らの意向を尊重して公開した東映の英断は評価されてしかるべきだろう。