本作が訴えるのは沖縄が本土決戦への時間稼ぎの「捨て石」にされた現実だ。結末の解説によると兵士10万人、民間人15万人が殺されたという。万に一つの勝算もない本土決戦のために命を散らしたことになる。
沖縄は戦後、米軍の基地となり、日本の繁栄の捨て石とされた。そのことは映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」に詳しい。いま安倍政権は県民の意向を無視して辺野古基地建設をごり押ししている。現在も続く苦難の出発点はこの戦闘にあった。本作は沖縄の悲劇を弁証法的に考えるためのテキストである。
(森田健司/日刊ゲンダイ)