<6>慰問活動ではまくらに少年院用語を使って話に引き込む
確かに、まくらで興味を引く話題で笑わせれば、落語に入っても笑いが取れる。何事も工夫なのだ。
「あと、少年院用語を使うのも受けますね。『笑ってないやつはまだ心にわだかまりがあるな、何か悪いことを考えてるから笑えないんだなと疑われて“仮退院”が遅れるよ』なんて言うと受ける。刑務所は仮出所ですが、少年院は仮退院です。どうしてそういう用語を知ってるんだと驚いて、話に耳を傾けるわけです。『反対に、おかしくもないとこで笑いすぎるやつは、医療少年院に移送されるからね』なんて言うと、ドカーンと笑いますね」
篤志面接委員になって、ますます慰問活動にのめり込む。
少年院の院長や幹部職員は刑務所に転勤になることもある。転勤の挨拶状に、「お近くにいらした時はぜひ、お立ち寄りください」と書いてあった。
「となれば、立ち寄るしかないでしょ。初めて慰問したのは旭川刑務所でした。入ってる連中は少年院とはまるで違う。長期刑の連中ばかりですから大変だ。そこであたしは考えた」
才賀はどんな手を使って笑わせたのか。
(つづく)
(聞き手・吉川潮)