「デトロイト」白人警官&軍隊が黒人青年をリンチした一夜

公開日: 更新日:

 デトロイト暴動はこの年の7月23日から27日まで続き、アルジェ・モーテル事件は25日の夜に起きた。3人の黒人が警官に殺された。

 発端は遊び心の発砲だったが、黒人パワーに怯える警官は若者たちを容赦なく痛めつける。同じ部屋にいたというだけで白人女性を売春婦呼ばわりし、男性を「おまえはポン引きだろ」と罵倒。黒人は仲間の死を嘆きつつ涙で命乞い。白人は表情も変えずにリンチを加える。両者の対比が観客に恐怖を与える演出だ。

 警官の中心人物はクラウスだ。黒人の命を虫けら以下と考えるこの男の残忍な性質が周囲の警官に伝染。猫がネズミをもてあそぶがごとき暴力が過熱する。彼らの暴走にミシガン州警察と軍隊は連帯責任を恐れてその場から退散する始末。その結果、尋問という名のリンチがさらにエスカレートする。

 クラウスという暴力的なリーダーが一人いるだけで周囲が狂暴化するのはかつての連合赤軍リンチ事件のようだ。彼らはリーダー格の永田洋子に逆らうことができず、「総括」の名目で12人もの仲間を殺した。クラウウスはモーテル、永田は山小屋。密室の中に全能感に狂ったサディストが一人でもいれば、理性的な人間までが人殺しに走ってしまう。

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