藤原正彦氏のユーモアに文藝春秋巻頭コラムの“品格”を疑う
そしてまた話はファンレターに戻る。文の構成がサンドイッチのようになっていて、再びパンの部分だ。
「知的で成熟したファンへの返答は容易ではない」として、「『先生の愛人にして下さい』などといううれしいだけの手紙がなつかしい」とつづり、最後を「最も印象に残るのは、地方のある純情な女子高生からの、『先生の幸せな家庭を破壊したい』だった。舞い上がった私は『ぜひ破壊して下さい』と思わず叫びそうになった」と締めている。
硬い話の具を柔らかいパンで挟んだつもりなのか。柔らかすぎて頭がクラクラする。
文藝春秋の巻頭コラムといえば、まさに雑誌の顔。最近では阿川弘之氏が思い浮かぶ。洒脱で軽妙でいて、重厚で深みがあった。歴代の執筆者も皆味わいがあった。あの頃が懐かしい。最近の文藝春秋の「HANADA」化的な傾向がこんなところにも表れているのか。
藤原氏は「国家」よりご自分の品格をお考えになったほうが良いのではないか。