広瀬アリスには「友近以来の“女芸人”やわ」と舌を巻いた
■初の大阪弁を集中マスター
四郎役の松尾諭さんは尼崎生まれで大阪弁になんの心配もいりませんでしたが、広瀬さんは静岡育ち。指導初日の顔合わせで「大阪弁ってむずかしいですね」とすっぴんの端正な顔を曇らせていました。稽古は毎週月~金で1~2時間、2カ月以上続きましたが漫才以前に、言葉の壁が大きく立ちはだかりました。
ところが、自身で台本にイントネーションの高低を細かく書き込み、反復練習をしながら読み合わせをしていくうちに、どんどん吸収していき、立ち稽古になると一層うまくなり、動きをつけていくとさらに漫才師らしく変わっていく。より正確にしたいということで広瀬さんはスマホに私が読んだセリフを録音し、それを繰り返し聞いていました。大阪人からすると完璧とはいえませんが、あの短期間の集中力には驚かされました。
衣装(着物)を身に着けての立ち稽古が始まると“女漫才師”に変わり、視線の運びや位置を指導すると、その眼力は私の想像をはるかに超えた「リリコ」になっていきました。
本番でカメラが回るとさらに輝きを増し「NGK(なんばグランド花月)の舞台に立てるよ、僕が見てきた中では友近以来の“女芸人”やわ」と伝えると「またまた、うまいことのせるんだから!」と高笑い。
真摯な稽古態度、本番での度胸、NHKの食堂で出演者のみなさんと一緒に食事をする時の、飾らない豪快で開放的な笑顔はほんとに“男前”でステキな女優さんでした。これからも女優の枠を超え「人間・広瀬アリス」の活躍の場が増えていくことを楽しみにしています。