そのジェンダー観、ホントに合ってる?「ガンパウダー・ミルクシェイク」が描く“女性解放”!
「女性らしさ」「男性らしさ」とはなんなのか?
それは異性から好感を持たれる為の服装や対応などで記されることが多くあります。たとえば、女の子の物はピンクで男の子の物は青と区別されがちで、自然と「固定概念」を子どもにも植え付けてしまっているわけですが、今、その“らしさ”さえもが「差別用語」であると言われています。
映画も「女性や子どもを守るのが男性の役目」という思い込みから、世界を守る為に男性主人公が奮闘するアクション映画が数多く誕生してきました。そんな偏った考えを正すべく、『スターウォーズ』はEP7「フォースの覚醒」(2015)から主人公を女性にシフトチェンジ、女性もジェダイ騎士になれることを世界に伝えたわけです。
そして、3月18日に日本公開となる『ガンパウダー・ミルクシェイク』は、男性であるナヴォット・パプシャド監督が女性解放を客観的に捉えながら、女性の多面的な魅力を称賛する作品を手がけました。
女殺し屋が旧態然とした男社会に打ち込む弾丸
まず、掴みが斬新です。“ファーム”という男だらけの会社に雇われている女殺し屋が、彼らの後始末に疑問を抱き、誘拐された幼い女の子を守りながら、図書館で武器のレンタルを行う自身も凄腕という3人の女性たちと共に“ファーム”と戦うシスターフッド映画。ここで注目したいのが、主人公のサムはオレンジのスカジャンにスウェットパンツ、表向きは図書館員である3人の女性もトラディショナルなパンツスタイルであることです。
あくまで動きやすさを重視しつつ、「女性らしいファッション」でのアクションに意味を持たせないジェンダーレスな出で立ち。しかも本の中に隠された武器という設定で、ジェーン・オースティン、シャーロット・ブロンテ、ヴァージニア・ウルフ、アガサ・クリスティという女性作家を紹介したり、目玉となる銃撃戦ではジャニス・ジョプリンの「心のかけら」が流れます。
さらに自分はフェミニストであり、娘の為に部屋の壁をピンクにしてユニコーンを買ったと豪語する悪党に「その考えこそ固定概念である」と言うように弾丸を打ち込むシーンありと、とにかく細部まで行き届いた女性応援アクション映画なのです。
女性だけにターゲットを絞らない、映画としての個性
加えて、作り手はサムにパンダのスーツケースと子ども用携帯電話を持たせたり、殺し屋なのにミルクシェイクを好むギャップや、可愛らしいウェイトレスのファッションを50オーバーの大人の女性に着用させるなど、年齢を気にせずに好きなものを身につけることが真の解放だと伝えているようで好感度も抜群です。
それでいてクエンティン・タランティーノ映画から影響を受けているであろうキャラクター設定や色使いと、随所に散りばめられた日本贔屓なアイテムも独自のセンスとして際立っていて、ターゲットを絞らずに生み出された絶妙なバランスに思わず唸ってしまうのです。
これほど興奮したアクション映画に出会え、嬉しささえ感じたのは私が女性だからなのでしょうか?いいえ、きっと男性にも伝わるものがあるはず。