言葉に救われ深く理解する橋本愛が身につけた「言葉にできない」演技
「『私は女優じゃない、役者だ』みたいな、中性的であろうとしてた。それは感覚としてですけど、自分のやる役が男性目線というか、男性の中の幻想とか実態ではないような女性の役をやることがあって。自分の職業を言うのが、どの言葉も当てはまらなくて。女優、俳優、役者、演者、表現者……。全部違うんですよね。腑に落ちるのはなかなかないな」(NHK・Eテレ「SWITCHインタビュー達人達」22年4月11日)
18歳になった頃には、ロマンポルノやピンク映画を見ることにハマり、新橋ロマン劇場に通い続けたという。さらに、ハリウッドザコシショウの単独ライブを毎年のように見に行き、「性根がタブーを好むところに非常に通じるものを感じました」(マガジンハウス「POPEYE」17年10月号)とその感想をつづっている通り、カルチャーを幅広く吸収している。
「あまちゃん」で共演した渡辺えりは、橋本がずっと控室で小説を読んでいたことを明かした上で、「映画もなんでも見てるから京マチ子も知ってるんですよ」「だから、昔の西高演劇クラブの同期としゃべってるような感じ」「劇作家協会にも入るんじゃないかみたいな作家タイプ」(NHK「スタジオパークからこんにちは」13年6月10日)と評している。
言葉が好きで「こう思うことで、こんなに生きやすくなるんだって」「言葉によって救われてきた」(「SWITCHインタビュー達人達」=前出)という橋本愛は、セリフを深く理解することで「他人なのに限りなく自分だし、限りなく自分じゃない」(同前)という言葉にできない演技を身に付けたのだ。