心電図じゃ見つからない 「心臓異常なし」は信用できない
「MRIでは、磁石と電波を使って心臓の細かい断層写真を撮り、3Dで立体表示します。これによって、血管の詰まり具合を初期の段階から調べられる。CTでももちろん可能ですが、X線の出力が大きく、放射線被曝が問題になる上、副作用のリスクがあるヨード造影剤が必須なので、患者さんへの負担を考えると、ベストはMRIです」
しかし、心臓のMRIを“普通に”行う医療機関はほとんどない。
「MRIは体のさまざまな部位を調べる高度な医療機器です。緊急性の要するものから検査に用いられるので、必要と判断されなければ、MRIを受けたくても予約は数カ月先に回されるでしょう」
心臓は1分間に60回動く臓器なので、検査の中でも画像診断の難しさはトップ。さらに、心臓のMRIは1回撮るのに1時間ほどかかる。MRI装置は非常に高額なので、次々と検査を行わないと、病院の経営にかかわる。これらの理由から、狭心症や心筋梗塞が高い確率で疑われる時を除いて、「まず行われるのは心電図と胸部レントゲン」というのが現状なのだ。
「ところが、心筋梗塞は何の前触れもなく起こる。米・国立衛生研究所が何万人ものデータを解析した結果では、心筋梗塞の50%が最初の発作で死亡しています。米国人に比べて日本人は心筋梗塞死が人種的に少ないですが、それでも約30%が最初の発作で亡くなっている。これを回避するには、発作を起こす前に、自分の心臓の状態を正しく知ることなのです」