いつもの症状が実は…肩凝りは心筋梗塞のサイン
Aさん(52)は、若い頃から肩凝りがひどく、それに慣れていた。ある時、電車に乗るため駅の階段を駆け上ると、左肩が強く痛んだ。
残業続きだったこともあり、Aさんは「疲れがたまった」くらいに思っていた。その後も、何度か左肩が強く痛む時があったが、特に気にしないでいた。Aさんは3カ月後、心筋梗塞を起こした。
もし、胸の辺りが激しく痛んだなら、Aさんは重大病と疑っていただろう。しかし、重大病のサインは、臓器そのものずばりの場所に出るわけではない。それが「放散痛」だ。九段クリニック・阿部博幸理事長に話を聞いた。
「内臓にはさまざまな神経系統があります。痛みはそこを伝わって生じるので、思わぬ場所に表れることが少なくありません」
心筋梗塞の前兆は、狭心症だ。階段を駆け上る、駅のホームを軽く走るといったちょっとした動作で症状が表れる。通常は、胸の中心辺りが痛む。しかし、それが違うところに出るのだ。
「狭心症の場合、左の肩や顎などが痛みます。狭心症は心筋梗塞の前兆とよくいわれますが、典型的な訴えは前胸部の真ん中あたりの圧迫感、焼けるような痛み、締め付けられるような感じです。いずれにしても、胸周辺に起こる。そのために、肩や歯が痛んでも、肩凝りや歯の痛みと勘違いするケースが珍しくないのです」