見逃される高齢者の「うつ病」は認知症の誤診が招く
「高齢者のうつ病を認知症と誤診しているケースが多い」と指摘するのは、くどうちあき脳神経外科クリニックの工藤千秋院長(日本認知症学会認定医・指導医)。それが取り返しのつかない結果を招いていることがある。
「物事を覚えられなくなった」「変な行動・言動が目立つようになった」「ぼーっとするようになった」――。認知症を疑って受診する患者は、大きく3つに分類できるという。このうち問題となるのは、「ぼーっとするようになった」だ。
「記憶力テストを行うと点数が悪い。そこで認知症と診断されるのですが、実はうつ病ということがよくあるのです」
うつ病では、注意力や意欲の低下が見られる。それが、記憶力テストの点数の悪さにつながる。
「認知症を診断するには、記憶力、認知症の問題行動、日常生活、高齢者のうつ、MRIなどの画像検査といったように、複数のスケールを用いなくてはならない。しかし、これらによる評価は専門医でなければ難しい」
認知症の専門医の数は少なく、たいていの高齢者が受診する医師は、専門医以外だ。すると、記憶力テストだけの判断になり、うつ病が見逃されてしまう。