うつ病は心臓にも大きなダメージを与える
技術の進歩によって情報処理速度が加速するなど、社会がどんどん複雑化するにしたがって、うつ病の患者さんが増えています。そして、うつ病は心臓疾患と大きく関係しています。
海外の研究では、うつ病患者は、そうでない人に比べて冠動脈疾患の発症リスクが約2・5倍アップするという結果が出ています。
また、うつ病患者が心筋梗塞を発症した後は、心血管疾患で死亡する確率が5倍になるという報告もあります。逆に、冠動脈疾患によってうつ病の発症リスクが2.8倍になることもわかっています。
うつ病と心臓疾患が関連するメカニズムについては、さまざまな要素が考えられます。まず、うつ病などの精神疾患に使われる向精神薬は、ほとんどに血管作動性があります。血管の平滑筋に作用して、収縮させたり弛緩させたりするのです。その作用の個体差や、服薬をきちんと守れないなどのストレスによって血管にダメージを与えてしまい、心臓にトラブルを引き起こします。中には、「薬剤性QT延長症候群」という心臓疾患を招くケースもあります。心電図波形の中でQ波とT波の間の時間が延びてしまい、心室頻拍や心室細動といった命に関わる不整脈を起こしやすくなる病気です。