著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

甲状腺がん検診 生死に関係ない潜在がんが極めて多い

公開日: 更新日:

 甲状腺がんは前立腺がんと並び、最も進行が遅いがん。早期発見そのものの意味が最も疑問視されるがんです。病院で死亡した患者の解剖によって前立腺がんが20%以上に発見されるのと同様、生死に関係のない潜在がんが極めて多いのが甲状腺がんの特徴です。

 お隣の韓国では、甲状腺がん検診が行われていますが、検診によって示された結果は、甲状腺がんと診断される患者が15倍になったにもかかわらず、甲状腺がんによる死亡はまったく増えなかったというものです。しかし、これは甲状腺がんの性質を考えれば、すでに予想された結果であって、特に驚くべきものではありません。

■福島の検診中止は妥当だ

 甲状腺がん検診は、過剰診断のリスクがあまりに大きい。体の表面にある臓器で目で見て早期に診断できる場合も多く、検診でわざわざ早く見つけにいく必要のないがんの代表なのです。

 福島の子供たちに対する甲状腺がん検診を取りやめるという対応に対して、ある新聞に反論記事が載っていました。残念ながら、ただ情緒に訴えるだけで、何も科学的な研究結果を参照しておらず、まったくがっかりでした。記事を書いている記者は、素人の立場に立っているとも言えますが、逆に専門家の立場をまったく無視しています。

 被ばくによる甲状腺がんであっても、早期に見つける必要性は小さく、逆に健康にまったく影響を及ぼさないようながんを見つけては、患者を不安に陥れているだけという面が強いのです。福島の甲状腺がん検診中止は、そういう意味でまったく妥当なものだと思います

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  3. 3

    大谷も仰天!佐々木朗希が電撃結婚!目撃されたモデル風美女に《マジか》《ビックリ》

  4. 4

    井上中日が「脱立浪」で目指す強打変貌大作戦…早くもチームに変化、選手もノビノビ

  5. 5

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希の「豹変」…記者会見で“釈明”も5年前からくすぶっていた強硬メジャー挑戦の不穏

  2. 7

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」

  3. 8

    “透け写真集”バカ売れ後藤真希のマイルドヤンキーぶり…娘・希空デビューの辻希美とともに強い地元愛

  4. 9

    爆笑問題・太田光のフジテレビ番組「休止の真相」判明 堀江貴文氏“フジ報復説”の読みハズれる

  5. 10

    バンテリンドームの"ホームランテラス"設置決定! 中日野手以上にスカウト陣が大喜びするワケ