手術の前に…逆流性食道炎は「ARMS」で治すという選択肢
ただ、「外科手術」というと患者の多くはおじけづいてしまう。逆流性食道炎はがんなどと違い、放っておいても死なない良性の病気だからだ。
「逆流性食道炎の外科手術は入院も4日程度で済み、安全で成績の良い治療です。それでも、薬の次が外科手術というのは、患者さんにとってハードルが高い。そこで行うようになったのが内視鏡を用いた治療法ARMS(アームス)です」
内視鏡で噴門部の粘膜を3分の2周から5分の4周切除し、瘢痕形成によって縮ませる。入院期間は外科手術と同じ4日間だ。
井上医師が最初にARMSを行ったのは10年前になる。早期食道がんで、逆流性食道炎もあった患者だった。食道がん切除のために内視鏡治療を行い、胃の内容物の逆流防止効果も期待して噴門部の粘膜も切除した。すると、逆流性食道炎の症状が劇的に改善し、患者の満足度も高かった。
それでも、外科手術という確立された選択肢があるので、内視鏡治療は積極的に行ってこなかった。しかし一方で、「薬は効かないが外科手術は嫌」とつらい症状を抱え続ける患者がかなりいる。そのため、3年ほど前から逆流性食道炎だけの患者にも内視鏡治療を実施するようになった。