認知症の発症リスク2倍 寝すぎは脳の老化を招くの信憑性
適度な睡眠は認知能力を高めるうえで大切なことのように思えます。一般的には、睡眠不足が続くと記憶力が低下するイメージがあるのではないでしょうか。
睡眠時間と認知症の発症リスクや、脳の老化現象の関連を検討した論文が、「米国神経学会誌」(2017年3月号)に掲載されました。この研究はフラミンガム心臓研究という、世界的にも有名な疫学研究に参加した人たちの登録データを解析したものです。
解析の対象となったのは2457人で、平均年齢は72歳でした。研究参加者の睡眠時間は自己申告により、6時間未満の短時間グループ、6~9時間のグループ、9時間を超える長時間グループの3つに分類され、認知症の発症や、脳の容積などが比較されています。
10年間以上にわたる追跡調査の結果、睡眠時間が6~9時間のグループに比べて、9時間を超えるグループでは、認知症の発症リスクが約2倍、統計学的にも有意に増加していることが示されました。
このような認知症発症リスクの増加は、特に軽度認知機能障害(認知症の前段階)だった人で約2・8倍、高学歴でなかった人で約6倍と、大きく増加していました。さらに、睡眠時間が4~6時間のグループに比べて、9時間を超えるグループでは、脳容積や、思考・行動などをコントロールする機能(実行機能)の低下が認められました。
認知症の発症要因は多岐にわたり、長時間睡眠が認知症を引き起こすかどうかについて、この研究結果だけで結論付けることは難しいと思います。しかしながら「寝すぎは脳の老化を招く」ということは、あながち否定できないかもしれませんね。