がんの骨転移による下肢麻痺は発症から48時間以内が勝負
かつては、肺がんで再発、あるいは骨転移での症状が出てきた時、多くの場合はがんの進行を抑える、痛みの症状を緩和するのが精いっぱいだったようにも思います。それが、手術によって麻痺を取り、歩くことができるまでの回復も望めるようになりました。
冒頭で紹介したTさんの再発した肺がんは、骨転移以外は薬で消失していました。それなのに、下肢の麻痺まで症状が悪化しました。再発、骨転移、下肢の麻痺とすべてを告知され、それでも麻痺の症状が取れて歩けるようになったTさんの気持ちはどんなものだったでしょう。また、「生きる」希望が湧いたに違いありません。
がんの骨転移で最も多いのは乳がん、そして肺がん、前立腺がんです。乳がん、肺がんなど、がんが骨に転移した場合、そして多発性骨髄腫では骨が破壊されて崩れるような転移(溶骨型)となり、とても骨が折れやすくなります。一方、前立腺がんが骨転移した場合は造骨型となり、硬くて骨折しにくいという違いがあります。
多発性骨髄腫の患者さんのお話ですが、入院中にベッドで起き上がろうとして体を支えるためにテーブルに右手をついて右前腕を骨折、あわてて左手をついたら左上腕を骨折し、一度に両腕が使えなくなってしまったという悲劇もありました。