「先輩がした手術」という事情で再手術を断る外科医がいる
かつて、心臓手術は「再手術が当たり前」と考えられていました。例えば、冠動脈バイパス手術で使用される足の静脈や、弁の交換で使われる生体弁などには“賞味期限”があるため、一定以上の期間を超えるときちんと機能しなくなってしまうからです。
しかし近年は、できる限り耐久性に優れた“材料”、あるいは自己成長を期待できる“生体材料”を使うことにより、再手術のリスクを大幅に減らせるようになりました。最初の手術だけで健康寿命を回復し、予想以上の長生きをされて天寿を全うする患者さんもたくさんいます。
一方で、まだ「再手術が当たり前」と考えられていた20年以上前に手術を受けた患者さんの再手術も増えています。当時、最初の手術を受けた患者さんが高齢になり、再び心臓にトラブルが起こるタイミングに差しかかっているのです。
これまでもお話ししてきたように、再手術は1回目の手術に大きく左右されます。最初の手術がエビデンスにのっとってしっかり処置されていれば、再手術もそれほど問題なく対応できる可能性が高くなります。しかし、最初の手術がエビデンスにのっとっていない方法だったり、心臓の機能を損なってしまうような処置が行われていたりすると、再手術のハードルがハネ上がってしまうのです。