寄生虫卵のんで自己免疫疾患が改善 世界注目の療法とは?
自己免疫疾患は前述の通り、完治が難しい。薬を飲みながら、上手に疾患と付き合っていかなくてはならない。ところが効き目の強い薬は非常に高価で、経済的な理由から治療継続を断念せざるを得ない患者もいる。さらに、高価な新薬を用いてもうまくコントロールできない患者もいる。
「一方、豚の寄生虫を用いた寄生虫卵内服療法は、1匹の豚から大量の寄生虫を採取でき、安定供給が可能。価格を低く抑えられるのです」
今、用いられている寄生虫卵は日本円に換算して2万5000円ほど。たった1回の服用で2週間ほど効果が持続する。
2週間で2万5000円というのは、自己免疫疾患の従来の治療薬と比べてはるかに安い。
「治療で寄生虫に感染すると他人にうつしてしまうのでは」と思うかもしれないが、豚の寄生虫なので人間の体の中で育たない。ただし、HIV患者など免疫機能が落ちている人は、そうとはいえない。過去に「免疫が落ちている子供で、内視鏡検査をしたら寄生虫が親虫に育っていた」という報告がある。
下痢や腹痛が起こる場合があるが、「自己免疫疾患が良くなることを考えれば、大した問題ではないと思う患者は多いのではないでしょうか」と嘉糠教授は言う。
■炎症性腸疾患と多発性硬化症
炎症性腸疾患は主に消化管に炎症を起こす慢性疾患の総称。乾癬は表皮が過剰に増殖し、フケのようなものが付着したり、それがボロボロはがれ落ちるなどの症状がある。多発性硬化症は、神経症状を繰り返す疾患。