大腸がんのリスクがアップ 盲腸を安易に切除してはいけない
近年、腸内細菌の研究が進み、さまざまな病気に関わっていることがわかってきた。そんな善玉腸内細菌の“隠れ家”になっているのが「虫垂」(盲腸)で、大腸がんの発症にも影響するという。
虫垂は大腸の入り口の先端にある小さな器官で、かつては「必要のない器官」と見なされていた。人間が進化する過程で機能を失い、その跡だけが残ったものだと考えられていたのだ。そのため急性虫垂炎と診断されると、ほとんどの場合で虫垂を摘出する切除術が行われていた。
しかし最近の研究で、虫垂の中にある免疫細胞が大腸の粘液中に分泌されている「IgA」という抗体を産生していて、腸内細菌の制御にも関わっていることがわかってきた。
そのため、軽い虫垂炎では安易に切除はせず、まずは抗生剤で炎症を抑える保存的治療を行うケースが増えているという。
日本消化器病学会専門医の江田証氏(江田クリニック院長)は言う。
「大腸内には100兆個もの腸内細菌が生息していて、バランスをとりながら免疫機能をコントロールしています。腸内細菌はバクテリアですが、大腸内に大量に生息しているのに腸の粘膜内に侵入し、感染症を起こすことはありません。これは、腸壁の粘液の中に分泌されているIgA抗体の働きによるものです。つまり、IgA抗体が免疫力を高め感染症を防いでいるのです」