INSPi奥村伸二さん 有棘細胞がんで鼻の半分を失い再建まで
一度は風船の圧が強過ぎ、皮膚が壊死しかけて急きょ水を抜くというアクシデントもありましたが、本当につらかったのは、その後の再建手術でした。
十分にのばした額の肉を逆三角形に切って鼻にするのですが、その肉が鼻として定着するまで血流をキープするために、額の太い血管を剥がしてつなげたわけです。見た目にもひどい状態でしたが、一番ダメージを受けたのは精神でした。もちろん、全身麻酔で手術中の記憶はありません。でも体が恐怖を覚えてしまったのか、手術翌日から震えが止まらなくなったんです。尋常ではなかったので手足を拘束されてしまい、それがさらに恐怖を増幅させて、最終的には奇声を上げて“発狂”していました。
でも面白いのは、「俺は今、発狂している」という自覚があったことと、「こんな高い音域まで声が出るんだな」と冷静に考えていたことです。結局、精神安定剤を処方されて、スッと落ち着いたんですけどね。
その後、つないでいた額の血管を切り離し、鼻の形を少し整える手術をしましてこの夏、ステージに完全復活となりました。実はこれで終わりではなく、あえて肉厚に作ってある鼻を薄くし、耳の軟骨を取って小鼻の形を作るという手術が残っているのですが、手術への恐怖心が抜けないので保留中なんです。