がん治療の前に…精子や卵子を凍結保存するのが常道です
放射線治療での卵巣への影響は、成人では放射線量が2.5~6グレイ程度、小児では10~20グレイ程度が永久不妊の閾値(いきち)とされる。
代表的な治療では、骨髄移植前の全身照射、腹部や骨盤の照射。また、ホルモン調節をつかさどる脳への照射により、生殖ホルモンの分泌低下が生じる場合がある。
「女児ではがん治療後に月経が再開しても、卵巣予備能は回復しないので、妊孕性が低下している可能性があります。本人は、それを知らずに大人になり、結婚して、初めて問題に直面するケースが少なくありません。また、通常の人よりも早く閉経を迎える可能性があるので、妊娠の機会を逃す原因にもなります」
男性の場合、抗がん剤は精子形成の過程に影響を与え、乏精子症や無精子症などを引き起こし、不妊症の原因になる。
無精子症になっても、治療後2年以上経つと多くは精子の出現が見られるが、抗がん剤の総投与量が多いと回復しない場合もある。放射線治療も照射線量が多いほど不妊期間が延長するという。
次回は、卵子や精子を凍結保存する「妊孕性温存療法」を取り上げる。