日常生活もままならず…野口健さんが壮絶ヘルニア体験語る
ヒマラヤへ行ったのは今年の春。それまでに50回以上も登ってきた山ですが、2年間のブランクは初めてです。不安でしたし、いざ登ってみるとこれまで当たり前にやっていたことにあたふたしちゃって……。でも、その感じが初心に戻ったような新鮮さで、「不安ってのは楽しいものだな」と思いました。
日常生活もできなくて「山は終わった」と思った時期もありました。「山で死ぬことはないからそれもいいな」と考えたことも確かです。でも、「山をやめたら何も残らないし、何も残らないのも怖い。どうであれ怖いなら山を続けよう」と思い至って今があります。
入院の時間というのは病気にもよるし、人にもよると思いますけど、考えようによってはぜいたくな時間だと思います。自分と向き合えるし、謙虚にもなれる。まあ、謙虚さはそう長くは続きませんけどね(笑い)。
(取材・文/松永詠美子)
▽のぐち・けん 1973年、米国生まれ。16歳のとき植村直己さんの著書に感銘を受け、登山を始める。25歳で7大陸最高峰世界最年少登頂記録を樹立。その後は、エベレストや富士山の清掃登山を実践し環境教育を広める活動に力を注ぐ。2015年に「ヒマラヤ大震災基金」設立、翌年は「熊本地震テントプロジェクト」を立ち上げ現地で活動するなど、被災地支援にも尽力している。