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天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

医学部に入学する時点から国が丸抱えして管理するのも一案

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 医師を目指す学生の質が落ちている――。このところそう感じることが多くなったと前回お話ししました。考えられる要因はいくつもありますが、医学教育制度の見直しも必要だと考えています。

 これまでは、全国の国公立大学の医学部と私立大学の医学部がバランスよく医師を輩出していましたが、いまはそれが崩れてきている印象です。高齢化がどんどん進んで患者が増えている一方、地方は医師の数が足りていない状況が続いています。いわゆる医師の偏在の問題が、さらに大きくなっています。また、都市部は医師の数は多くても、先進的で高度な医療が次々に行われることで一人一人は多忙になり、結果的に地方も都市部も医師が不足しているのが現状です。

 そうした問題を解消しようと、舛添厚労大臣の頃から医学部に入るための門戸を広げて医師数を増やす政策がとられました。しかし、並行して実施された初期臨床研修医制度の弊害で大学医局の地域医療支援ができにくくなった実情が加わり、むしろ地方の医療が疲弊してしまいました。

 医学部への門戸を広げたことに加え、さらに地域医療支援の名目で「地域枠」や「地元枠」という学力の低い学生が入りやすい制度も導入された結果、近年は医師国家試験の合格率が90%割れを起こす事態もまれでなくなっています。9600人程度の同学年国家試験受験者のうち約1000人が不合格となり、教育経費が年間約1000億円も空転した形になっているのです。

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