医学部に入学する時点から国が丸抱えして管理するのも一案
医師を目指す学生の質が落ちている――。このところそう感じることが多くなったと前回お話ししました。考えられる要因はいくつもありますが、医学教育制度の見直しも必要だと考えています。
これまでは、全国の国公立大学の医学部と私立大学の医学部がバランスよく医師を輩出していましたが、いまはそれが崩れてきている印象です。高齢化がどんどん進んで患者が増えている一方、地方は医師の数が足りていない状況が続いています。いわゆる医師の偏在の問題が、さらに大きくなっています。また、都市部は医師の数は多くても、先進的で高度な医療が次々に行われることで一人一人は多忙になり、結果的に地方も都市部も医師が不足しているのが現状です。
そうした問題を解消しようと、舛添厚労大臣の頃から医学部に入るための門戸を広げて医師数を増やす政策がとられました。しかし、並行して実施された初期臨床研修医制度の弊害で大学医局の地域医療支援ができにくくなった実情が加わり、むしろ地方の医療が疲弊してしまいました。
医学部への門戸を広げたことに加え、さらに地域医療支援の名目で「地域枠」や「地元枠」という学力の低い学生が入りやすい制度も導入された結果、近年は医師国家試験の合格率が90%割れを起こす事態もまれでなくなっています。9600人程度の同学年国家試験受験者のうち約1000人が不合格となり、教育経費が年間約1000億円も空転した形になっているのです。