木綿豆腐は水切りのひと手間で塩分を控えて味と食感アップ

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木綿と絹ごし 豆腐の製法と栄養分の差異

 豆腐の製法をおさらいしておこう。「腐」の文字があるが、発酵食品ではない。大豆を搾ると豆乳がとれる。その字のごとく、ミルクと同じくらいタンパク質に富んでいる。大豆ほど良質のタンパク質を含んだ植物性食材はないので、大豆は畑の肉などと呼ばれる。豆乳に、“にがり”を加えると大豆タンパク質が網目状に凝集し、プリンのようなぷりぷりのカタマリとなる。これが豆腐。

 にがりとは海水からとれる塩化マグネシウムを主体とするミネラル成分。マグネシウムイオンがタンパク質表面の電荷を中和するので、タンパク質同士が近づいてくっつくという仕組み。このままいただくのが絹ごし豆腐。

 いったん豆腐を崩して、布を敷いた箱に入れ、圧縮・脱水・成形したものが木綿豆腐。表面に布の跡がつく。搾った分、木綿豆腐は歯ごたえがあり、栄養素(主にタンパク質)も濃縮されることになる。そのかわり水溶性のビタミンなどは抜けやすいので、絹ごしの方に多く含まれる。絹ごし、木綿の差は、実は、絹や木綿の布でこしているからではないのである。

 豆腐の食感は楽しい。いろいろな料理に利用される。栄養も豊富。夏でも冬でもおいしい。こんな便利な食材を誰がいつ考えたのか、今となってはわからないが、大豆はアジア圏で紀元前から栽培されていたので、偶然発見されて、アジア独自の風土食となったのだろう。日本では、江戸期の本に登場する豆腐小僧という可愛い妖怪がいる。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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