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天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

中国の患者は日本ではありえない量の薬を処方されていた

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 こうした話を聞くと、「日本ではちょっとありえないな」と感じる人がほとんどでしょう。つまり、患者のレベルにも日本と中国では大きな差があるということです。そして、それは国民皆保険制度によって全国どこでも一定水準以上の治療を受けられるからこそのものだといえます。

■インドの医師は世界最先端を目指しているが…

 これがインドになると、また“景色”が変わってきます。4年前、世界のIT企業が多く進出しているバンガロールを訪れ、低所得者向けの病院と、富裕層向けの病院の両方を視察しました。圧倒的に人口が多い低所得者層の方が患者数も多いため、インドではできる限り無駄を省いた医療が行われています。手術の人員は必要最小限に抑えられ、手術機器もなるべく再利用する方針が徹底されています。病院は「できる限り効率良く患者さんを回転させる」ことに注力しています。

 医師もしたたかで、「環境を整えて公衆衛生を向上させ、生活習慣を改善しながら病気を治療していく」という考え方をするのではなく、「インドで公衆衛生や生活習慣の改善が世界レベルに達するには50年以上かかるだろう。しかし、いま目の前の病気は待ってくれない。だからわれわれは高度な医療を実践して世界と肩を並べるんだ」といった意識を強く感じました。平等に高度な医療が受けられる日本とは違い、インドの低所得者層は患者数が多いのに置き去りにされている印象です。医師がやろうとしていることは間違いとはいえませんが、医療者としての目標はずれているのではないかという疑問が残りました。

 行われている医療だけでなく、病院、医師、患者のレベルも、日本はアジアで突出している。実際にアジア諸国を訪れたからこそわかる実感です。

【連載】上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

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