感染性心内膜炎の増加に含まれる見直すべき「キーワード」
かつての米国は、日本から見ると資源が豊富なうえに先進的な科学技術を有し、経済的にも豊かで国民の生活水準が高い“憧れの国”でした。しかし、近年は雇用の不均衡、移民やホームレスの急増といった社会問題、高齢化や超肥満の人々が増えているといった健康面の問題など、人間の生活の構造の歪みがどんどん出始めています。そこに貧富の格差が重なり、さらに公衆衛生の格差が加わったことで、感染性心内膜炎の発症が増える状況が揃ってしまったのです。
もちろん米国はいまも世界トップの先進国ですし、ITなどの科学技術はうらやましいくらい急速なスピードで進んでいます。しかし、“良い方向”と同じくらい“悪い方向”にも進んでいる印象です。公衆衛生が整っていないことで病気が多いというケースは、インドやベトナムといったアジアの開発途上国で多く見られます。これまで私も現地で直接、目にしてきました。いまの米国はその部分が逆戻りしているといえるでしょう。
そう考えると、米国で報告された感染性心内膜炎の急増は、世界中の開発途上国でも同じように起こる可能性があります。貧富の格差に加え、法的秩序が乱れて薬物乱用が増えれば、発症の条件がさらに整うことになります。