「歩幅」が狭い人は広い人より認知症の発症リスクが3倍高い
最終的に追跡できた666人のうち認知機能の低下が最も多く見られたのが歩幅の狭い群で、最も少なかったのが広い群だった。広い群のリスクを1とした場合、狭い群のリスク比は3・39倍で、普通の群は1・22倍。年齢、性別、身長、高脂血症の既往症、血液検査の数値などの要素を調整した結果で、多くの高齢者に当てはまる。
「集団の健康状態を調べた疫学調査で3倍以上のリスクの違いが出るのは珍しく、それほど歩幅が認知機能の低下に大きく影響するということ」(谷口研究員=以下同)
続いて谷口研究員らは歩幅の加齢変化と認知症の関係について最長12年間の追跡調査を実施。対象者は延べ6509人。その結果、歩幅は3つの異なる加齢変化パターンに分類できることが分かり、最も歩幅が広く推移する群に比べて、歩幅が狭く推移する群では、認知症の発症リスクが3・34倍高かった。
「この研究で明らかになったことは、歩幅が狭い状態のまま70、80、90歳と年を重ねている人の認知症リスクが高いということです」
これまでも歩行速度(歩幅×歩調)が落ちると認知機能低下のリスクが高くなることは指摘されていた。しかし、歩幅と歩調のどちらが関係しているかは、谷口研究員が研究を始めた当時は明らかではなかった。そこで歩幅と歩調を分けて調査。歩幅が認知機能の低下や認知症リスクに大きく関係していることは前述の通りだが、歩調と認知機能の低下には因果関係が見られなかった。