<8>カラオケ、ライブハウスのクラスターに惑わされない
暑くてたまらないのに、マスクを着けなければバスに乗るのもはばかられる世の中だ。これから夏に向けて熱中症リスクは高まる一方だというのに、マスクを強いる社会はおかしいのではないか。公衆衛生に詳しい岩室紳也医師に聞いた。
「WHO(世界保健機関)は以前、健康な人がマスクを着用すべきだと判断するには十分な証拠はないと主張していましたが、最近、公共の場での着用を推奨すると方針を変えました。これをもって、日本ではマスク論議は決着した、マスクをするのが当然、という風潮になっています。しかし、WHOもマスクをしただけで感染を抑えられると言っているわけではありません。私はマスクをしている多くの人は、新型コロナウイルスはどんな経路をたどって感染し、マスクはその防止にどのように役立っているか、まず理解することが大切だと考えています」
感染経路は飛沫、エアロゾル、接触感染といわれる。新型コロナでよく語られるのは飛沫やエアロゾルだ。ライブハウスやカラオケで感染者が多数出ているからだ。大声で歌い、叫んだときに出る飛沫やエアロゾルが直接、他人の口や目や鼻から入ったといわんばかりだが、本当だろうか? そこで感染した人は歌っている人の真ん前にいて飛沫やエアロゾルを直接口や耳や鼻に浴びたのか? 浴びたとして飛沫やエアロゾルに人を感染させるだけのウイルス量が含まれていたのか? それが科学的に実証されたとしても、それを理由に、はるかに少ない音量で過ごす一般の人の日常生活に、全員マスクを強要されるだけの根拠になるのだろうか?