尾上泰彦
著者のコラム一覧
尾上泰彦「プライベートケアクリニック東京」院長

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

なぜ睾丸は2つなのか…片方が不全になっても補えるから?

公開日: 更新日:

 男性の陰のう(タマ袋)に納まっている精巣(睾丸)は通常、左右1個ずつあります。そこで素朴な質問です。なぜ、精巣は2つあるのでしょうか。精巣は、子孫を残すための大事な精子を作る器官です。片方が外傷などで機能不全になっても、もう片方で補えるからという考えができます。

 しかし、発生学的には男性の体は「ヒトの基本形」である女性から分化したものです。だから精巣は2つあるのです。どういうことかといえば、お母さんのお腹で発生した胎児のときは、男の子の精巣と女の子の卵巣は両方とも「生殖腺」と呼ばれる同じものなのです。

 それがY染色体から性分化を誘導する遺伝子が発現すると男の子に変化します。妊娠2カ月ごろから生殖腺は精巣へと成長しながら男性ホルモンを作ります。そして妊娠9カ月ごろまでに腹部にある精巣はソケイ部(足の付け根)を通って、陰のう内に下降してくるのです。女の子の場合は、卵巣へと成長して腹部の中で動きません。ですから性器も、女性の大陰唇が閉じたものが陰のうとなり、小陰唇が縫い合わされてペニスとなり、クリトリスが亀頭となるのです。このように女性のお腹の中にある2つの卵巣に相当するのが、男性にぶら下がっている2つの精巣というわけです。

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