初孫ができて思い出す乳がんで亡くなった女性患者の言葉
私の部屋の中、机の周りは本や資料などの印刷物でいつも散乱し、家人から「断捨離」を勧められています。私自身も「そうだな。こんなものを残しても意味がない」と、その時は捨てるのですが、気付くとまた、たまってきます。
特に医学の古い文献などは、「もう役に立たない。あの時は苦労して書いた論文も、残しておいても誰も読んではくれないだろう。集めた論文、自分で書いた論文、あれも捨てる、これも捨てる……。少なくとも10年間も放ってある論文は今後も見ないだろう」と、そう思って少しずつ減らしました。
不要不急の外出はするなと言われ、それなら時間もあってはかどるはずの部屋の整理・整頓は、逆にうまくいかず、それを他人のせいにしている自分に腹を立て、相変わらず自己肯定と否定の堂々巡りです。
頑張って書いた思い出のある論文も、「別刷りの一部だけは残しておこう」と考えるようにして、どんどん捨てていきました。ところが1年前、私に初孫ができてからは「断捨離」のスピードが鈍ってしまいました。
息子夫婦から送られてくる孫の動画を見ていると、「もしかしたら、この子が大きくなった時に読んでくれるかもしれない」「爺はこんなことを考えていた。こんな本を読んでいた。こんなことを書いていた……そんな興味を持ってくれるのでは」などと考え、「この別刷りは、この本は残しておこうか」という思考が頭をよぎるのです。