初孫ができて思い出す乳がんで亡くなった女性患者の言葉
梅原さんの「この世の生命は受け継がれていくことに救いがある」という言葉が、今になって身にしみるのです。
34年前、私が担当していて胃がんで亡くなったSさんの奥さまから、先日メールが届きました。その当時、奥さまは大変苦労されたと思うのですが、幸せそうに「今、孫たちは大学生4人、高校生3人、そして一番チビさんもこの4月から中学生です」と報告してくださいました。一緒に送っていただいたご家族の集合写真を目にして、「こんな幸せな方もおられるのだ」と思いました。
新型コロナウイルスの流行で突然に不幸になった方がたくさんおられることを思うと、初めて爺になった私が孫に会えずにいて、写真や動画でガマンしているのは当然の話です。それでも、孫に触れてみたい、風呂に入れてみたい。そう思うのです。
癌研究会付属病院(現がん研有明病院)の院長だった西満正氏は、小児科病棟を回診して「幼子の匂いに勝るものなし」と詠みました。血がつながっているとか、DNAがつながるとは、天からいただいた“心の魔術”なのでしょうか。閉塞感の中でも、目に見えない元気をくれるのです。