コロナ禍では検診の“先の検査”も大幅に減っている心配がある
ある日、自営業のKさん(54歳・男性)は市の検診で「要精査」とされ、その用紙を持参して来院されました。Kさんのカルテファイルにはその用紙が挟んであり、それが2枚ありました。今年の日付のものには「胸部X線で異常影があり要精査」と、昨年の日付のものには「胸部要精査」と書き込まれていました。
私はKさんを診察室に呼び、「去年は病院を受診されなかったのですか?」と尋ねました。するとKさんは、マスク越しに「ええ、すみません。仕事が忙しくて放っておいてしまいました」と申し訳なさそうに言われます。Kさんは気にされていたようで、保管していた昨年の用紙も持参したのでした。
急いで採血と胸部X線検査を指示し、さらにCT室に電話をして緊急の胸部CT検査をお願いしました。KさんにはCT検査前の説明をして了解を得た後、「1時間後くらいに結果が出たら、またお呼びします」と伝え、検査に臨んでもらいました。
しばらくして、電子カルテでKさんの胸部X線写真を見ると、全体にはきれいな肺ではありません。胸部CT画像では、右肺上葉に径約1センチの丸い陰影が認められました。さらに採血結果では、肝機能はまずまず正常の上限、血糖値は120㎎/デシリットル、HbA1Cは6.2%と高値でしたが、糖尿病の緊急の治療は必要ないと判断しました。